2008年07月27日

丹波市医療フォーラム

丹波の森公苑にて医療フォーラムが開かれ
パネリストとして意見発表の機会をいただきました。

 
(ここに意見発表の原稿を全文掲載いたします。)

皆さんこんにちは。
県立柏原病院の小児科を守る会です。
私は代表をしております丹生裕子と申します。
今日、こうして皆さんにお話できることを大変嬉しく思っています。

私たち守る会は、
最近、新聞やテレビなどに取り上げられるようになりましたが、
守る会が実際どのような活動をしているのか
良く知られていないように思います。

守る会の目的は、丹波の地域医療を守ることです。
地域医療の現状を知らせ、どうしたら安心して暮らせる地域になるのか?
お医者さんが働きやすい地域になるのか?
住民として出来ることを一緒にしていきましょう!と呼びかけることが、
守る会の役割だと思っています。

そんな守る会が、何故こんなに注目されているのでしょうか?
それは守る会の活動に「結果」が出ているからだと思います。

柏原病院小児科の時間外の受診者数が減り、
そして新しい先生が来てくださいました。
でもその「結果」を出したのは、守る会ではありません。
ここに住む「住民のみなさん一人ひとり」なんだと思います。
本当に感謝しております。
これからも皆さんそれぞれが自分自身の問題として取り組み、
考えていって欲しいと思っています。

地域医療崩壊の原因の一つとして、
お医者さんと私たち住民の間に「溝」があるように思います。
医療が進歩した今、患者の側に
「病気は治って当たり前」
「具合が悪いときには、いつでもお医者さんに診てもらって当たり前」
という気持ちがあるのではないでしょうか?
昼夜を問わずちょっとした熱やケガで受診する、
いわゆるコンビニ受診も、
お医者さんを疲れさせる要因になっていると聞きました。

守る会は、この「溝」をいかに埋めるかを考え、
3つのスローガンのもと活動を進めてきました。

3つのスローガンとは
「コンビニ受診を控えよう」
「かかりつけ医を持とう」
「お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう」です。

一人でも多くの人が、この「溝」に気付き、
そしてそれを埋めるための行動を起こしてほしいと願って、
私たちは丹波市内だけでなく、
他の地域での講演依頼も引き受け、守る会の活動を報告してきました。

講演会やシンポジウムで、
参加された医療関係者や自治体職員の皆様の意見を聞くたびに、
住民のコンビニ受診をいかに抑制するのかが
医療崩壊を救う一つの「カギ」であるように感じます。
そして、それを同じ住民の立場から呼びかけることが
「守る会」の役割なのだろうなあと思います。

また、ただ単に「コンビニ受診を控えよう」と呼びかけるだけではなく、
子育て中の(主に)ママたちの不安を軽減するための
サポートも必要だと考えています。
そのために「病院へ行く、その前に」という冊子を作成し、
丹波市の協力のもと市内の乳幼児のいる家庭に全戸配布しました。

守る会は、ここ丹波の地が、
安心して子どもを生み育てられる環境であり続けて欲しいと願い、
活動をしています。
「子どもを守りたい!」それが守る会の活動の原点でした。
そして今では、子育て世代だけでなく、幅広い年代の方々にも、
安心して暮らせる地域づくりのためにできることを呼び掛けています。

本日配布されたプログラムにも
「ママのおしゃべり救急箱」のチラシが入っていると思います。
現在、守る会の活動として力を入れているのが
「ママのおしゃべり救急箱」通称「ママ救」です。
これは、対話重視の手作り勉強会です。
知識を持てば、安心できます。
おしゃべりを通じて地域医療のことももっと身近に感じて欲しいと思っています。
この勉強会の「出前」をご希望の方は是非ご連絡ください。
よろしくお願いいたします。

さて、ここからが今日の本題です。
まずはこの絵をご覧ください。

(クリックで拡大します)

「兵庫の地域医療」という名前の船です。
今にも沈没しそうです。
船底はひび割れ、海水が入ってきています。
機関室にいる人は、腰まで水に浸かりSOSを出しています。
それに気付いた人は、必死にバケツで水をくみ出しながら、
皆に大声で知らせようとしています。
しかし、その声は、ごく一部の人にしか届いてないようです。
他の多くの人たちは、
この船が沈みゆく船だということを知らずに、
のんびりと魚釣りや日光浴などを楽しんでいます。

この船の船長は、この非常事態に気付いているのでしょうか?
それとも、気付かないほど無関心なのでしょうか?
もし、気付いているのだとすれば、今、何を考えているのでしょうか?
危険に敏感な動物たちは、
もう付き合っていられないとばかりに船を去りました。
飛行機に乗っているのは映画シッコの監督マイケルムーアです。アメリカの医療崩壊を嘆いた映画監督が、アメリカの医療崩壊を追随する日本をみて涙しているところです。

地域医療の現状を知り、実際に行動に移した市民がたくさんいたことで、
この地域は少しずつ変わってきているように感じています。
小児科は充実してきました。
しかし、内科・脳外科・整形外科などは
医師不足がさらに深刻になっています。
柏原病院の存続自体も危ういと言われています。
誰もが安心して暮らすためには他の診療科の充実が不可欠です。

行政がすべきこと・行政でなければ出来ないことがあります。
お医者さんが努力しなければならないこともあるかもしれません。
丹波の地域医療の現状を知れば知るほど、
対応が先送りされている印象を受けます。
行政や病院の動きが住民から見えにくいように思います。
住民に経過をしっかり伝え、
共に考える環境をつくることが必要ではないでしょうか。

さらに、新聞報道を読んで感じる素朴な疑問ですが、
丹波市内にある病院のお医者さんが一緒に働くことはできないのでしょか?
どんな障壁があって、どうすれば乗り越えられるのか、
住民として知りたく思います。
また、開業されている先生の力を今以上にお借りすることが、
地域医療の維持につながるのではないでしょうか。

行政や病院ができることがあると同時に、
住民だからこそ出来ることも、もちろんあります。
「守る会」は同じ住民の立場から、地域医療の現状を知らせ、
何ができるか?何をしたらよいかを共に考え
「かしこい住民」になるよう呼び掛けをしています。

今いるお医者さんを大切にし、
お医者さんにとって働き甲斐のある地域にすることが、
住民として出来る大切なことだと考えています。
住民の一人ひとりの心がけが本当に大切です。
「守る会」の活動を通じて、
一人ひとりの小さな力がやがて大きな力になり、
地域が変わっていくのだということを私は実感しています。

住民だけでは地域医療の崩壊を防ぐことは出来ません。
今こそ、地域医療を守るために
〜誰もが安心して暮らせる地域づくりのために〜
行政・お医者さん・そして住民がそれぞれの立場から
全力で取り組まなければならないと考えています。

私たちは「柏原病院の小児科を守る会」という名前でスタートしましたが、
勉強していくうちに気が付いたことがあります。
病院という建物や小児科という単独の科を守るのではなく、
『丹波に必要な医療を残し、それを守らねばならない』…ということです。

医療者と市民、報道…そして行政、
どれが欠けても医療崩壊には立ち向かえません。
総力戦なのです。
どうか気づき、考え、疑問や不安を口に出し、動き出しましょう。
総力戦でないと間に合いません。
船は沈みます。
皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。

ご清聴ありがとうございました。